マイノリティ投資(出資)とは?
マイノリティ投資(あるいはマイノリティ出資)とは、広義の意味では投資対象となる企業の株式の「50%を超えない議決権数を取得する」こと。50%に満たないため、ベンチャー企業にとっては経営権を譲ることなく資金調達をすることができる。反対に、50%を超える出資は「マジョリティ投資」と呼ばれ、起業した経営者は過半数の議決権を手放すことになり、自身だけで会社の経営判断ができなくなる。すなわち出資先の連結子会社となる。
狭義の意味では、経営者を除いた最大株主ではないこと。あるいは、当社のPLにおいて最終利益に影響がない投資のこと。例えば株式保有比率が、経営者60%、他の投資家Aが30%、当社が10%といった状態で、子会社でも持分法適用会社でもないこと。ベンチャー界隈ではこの狭義の意味合いで使われることが多い。
「マジョリティを取る」というような言葉が交わされることがあるが、こちらは議決権の50%以上を取得する、つまり子会社化するということを示唆するもの。
なお、スタートアップ投資以外でも、普通株式の売買が行われる株式市場において、上場企業の株式を取得する資本業務提携などでマイノリティ出資となる状況は往々にしてある。
ベンチャー側のメリット、デメリットは?
ベンチャー企業にとって、50%を超える株式(議決権)を単一の投資家に所有されるということは、M&Aによりその投資家(企業)の傘下に入ったということになり、議決権の過半を取られるため経営の自由は株式会社のルール上では消失する。
したがって、起業家が自分の自由に経営がしたいという考えがあるのであれば、可能な限りマイノリティ投資で資金調達先を分散させるという手段を取る必要がある。一方で、マイノリティ投資によって投資家が増える場合、出資比率にもよるが大きな意思決定に時間がかかる場合がある。マジョリティにしろ、マイノリティにしろ、投資家との起業家の関係は、投資家のスタンス次第であるため、自社の活動が阻害されない形での資金調達を計画することが大切である。
投資家のメリット、デメリットは?
メリット
株式を50%を超えて株式(議決権)を取得するということは、その企業を連結子会社化するということ。つまりM&A、買収にあたる。50%を超過する投資というのは、多くの場合は投資金額が大きくなり、企業にとってはリスクを伴う。
投資家はマイノリティ投資をすることによって、限られた予算の中で1社に偏重することなく複数の企業へ分散して出資するポートフォリオを組むことができる。これがマイノリティ出資のメリットである。
デメリット
一方でデメリットは議決権がないことだ。他の投資家とのバランスや、資本業務提携などの意図がない純投資の場合、まったく経営に関わるの意思決定に関与することができない。
しかし、実は本当に重要なポイントは出資規模の話ではなく、連結によるPLへのインパクトがあるかないかだ。
子会社にすると連結でグループのPLに入ることになるので、対象企業がまだ赤字企業なのであれば、のれん償却に加えて営業利益のマイナス分がグループ全体に影響する。したがって、本体と買収した企業の規模のバランスによっては連結決算上で収益率を低下させる要因となる。買収した側の企業が上場企業であれば、業績を開示する必要があるため、説明責任に追われることになる。
まとめ
マイノリティ出資は、ファイナンシャル・リターンに期待して、単純に株主として名を連ねるだけというスタンスの場合もあるものの、ベンチャーキャピタルではない事業会社が投資を行う場合には、既存事業とのシナジーを期待して出資する場合が多い。まずマイノリティ出資というプロセスを踏んでから、子会社化することによって将来価値が高ることが期待できると判断するのであれば、自らM&Aに動くという選択肢もある。(ただその場合、事業の成功が見えていることになるので、投資時点よりも一株あたりの価格は高くなることがほとんど)
基本的に、マイノリティ投資家はバリュエーション時の価格交渉権は低く、ベンチャーあるいは同じマイノリティだったとしても該当のラウンドのリード投資家が算定する価格を受け入れるか受け入れないかという立場になる。
金額が見合わないと判断しても、その他にも投資者候補は大勢がいる可能性があるため、、マイノリティ投資家(ここでは協調投資家)は交渉時の立場は弱いということは念頭に置いておこう。
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